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Memory of Night 2
第17章 台風接近

 隣の部屋を使わせてもらい折り返すと、ワンコール鳴り終わらないうちに春加は出た。

「もしもーし」
「もしもしじゃねーよ、鬼電やめろって何度も言ってるだろ? なんだよ七回って」
「あー、スロットの願掛け? 最近負けてばっかでさ」
「……スロットって」

 悪びれなく答える春加に、もう呆れて言葉もない。
「一生負けてろ。で、用は?」
「おまえんとこの高校、冬休みいつからいつまで?」
「冬休み? 夏じゃなく?」
「うん、冬」

 まだ夏休みに入ったばかりなのに、突然冬休みの期間を聞かれても困る。咄嗟には出てこなかった。

「……知らね。クリスマスくらいから、年明けの7日とか8日くらいまでじゃなかったっけ? なんでいきなりそんなん聞いてくんの?」
「あー……まあ詳しいことは会った時に話すよ。遠征の話が出ててね。泊まりで山行くぞ」
「はあ?」
「おまえ、高校卒業したらうちのバイトも辞めんだろ? その前に一個だけ、頼みたいことがあるんだよね」
「頼みたいこと?」

 電話から聞こえる春加の声は、珍しく真面目なトーンだった。

「まあ、それももう少し話詰めてからちゃんと言うわ。とりあえず夏楽しめ。じゃ、またバイトで」
「あ、ちょ……」

 すでに通話は切れていた。ツー、ツーという無機質な音しか聞こえない。
 春加はいつも一方的すぎる。

「……結局なんの電話なわけ?」

 要領を得ないまま、宵は首をかしげるのであった。
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