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Memory of Night 2
第18章 人魚姫

 何か遠くで声がしていた。まるでバケツでもかぶっているようにぐぁんくぁんと響いていて、最初言葉は聞き取れなかった。
 名前を呼ばれているのだと、ゆっくりと理解する。
 胸につっかえていた何かを、ごっと口から吐き出していた。同時に何度もむせて、急に呼吸がらくになる。
 ようやく大山は目を開けた。
 暗闇の中、間近に誰かの気配を感じた。最初はぼやけていた焦点が合う。

「……良かった」

 目前にあった綺麗な顔は、ほっとしたように呟いた。
 そうか、と思う。ここは海ではなく陸らしい。背に当たる固い地面の感触に、大山は感激した。

「……人魚ってほんとに居たんだな」

 目の前の人魚が助けてくれたのか。自分は生きているのか。これは夢ではないのか。
 大山は右腕を伸ばし、人魚の白い頬に触れようとした。

「はあ? 寝ぼけたこと言ってねーで目を覚ませ!」
「いってえ!」

 伸ばした手の甲を思いきりつねられ、その痛みがいっきに大山を現実へと連れ戻した。
 大山は飛び起きた。目の前に居たのは童話の中の人魚姫などではなく、クラスメイトの男であった。

「宵! だ、大丈夫か?」

 ようやく海での出来事を思い出した大山は、息せき切って尋ねた。
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