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Memory of Night 2
第25章 夏の終わり

 ーーアイマスクの布地は思っていたよりも柔らかかった。
 閉じた瞼への妙な圧迫感もない。平たいゴム製のバンドになっているため、つけ心地も悪くはなかった。

「どう? 快眠用の道具だし、きつくはないでしょ?」
「……うん。SM用のアダルトグッズじゃねーんだ」
「違う違う。ただの安眠グッズだよ。このアパートに俺が一緒に住み始めた頃、宵、あまり寝つけてなかっただろ? その時に買ったんだ。これをつければ、多少は寝つきやすくなるかなと思って。でも、ネットで注文して届く頃には必要なくなってたみたいだから、渡さなかったけど」

 そんなふうに言われて、思い出す。
 確かに晃と一緒に住み始めた頃は、なかなか寝つけなかった。眠りが浅く、晃が寝返りを打ったりトイレに立つだけで起きてしまうこともあった。
 人と一緒に住むのが久々だったから、そのせいだと思う。志穂とも三年近く離れていたし、そもそも一緒の布団で寝たことはなかった。
 昔の家ならいざ知らず、このアパートで、誰かと寝床を共にしたことはない。
 けれど寝つけなかったのは最初の一、二週間だけだ。それからはむしろ隣にある温もりが心地よく、一人で居た頃以上によく眠れた。
 そんな短期間の変化すら、気付かれていたことに驚いた。
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