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Memory of Night 2
第30章 花魁ショー

 その日のローズは混んでいた。花魁ショーは、店ではかなり人気のイベントだという。イベントが行われる日はなんでもない平日に比べれば混むが、席が埋まるほどではないことも多い。
 だが今日は、ぼちぼち埋まってきていた。

(ポールダンスの時より全然マシだけど)

 あの日はもう、席が埋まるどころの話ではなかった。立ち飲み客で溢れ返り、客たちの間を通ることもかなわないほどだったので、無料のドリンクサービスも諦めた。
 酒や料理を作る材料まで足りなくなり、その日の主役であるはずの春加が買い出しに行っていた。
 ピーク時の居酒屋みたいな忙しさだったのを覚えている。
 あの日を超えることなんて、ないだろう。

「お疲れ様」
「おつか……」

 フロアを見渡していた時、ふいに背後から声をかけられた。
 振り向き、挨拶を返そうとしたところで声の主が誰なのかわかり、つい途中で止まってしまう。
 久しぶりに顔を見た。それは春加だった。

「久し、ぶり。もう体調は平気なわけ?」
「普通」

(普通って……)

 大丈夫、とか、元気、とか、もう少しポジティブな返答が欲しいところだ。普通と言われても、なんとなく返答しづらい。
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