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Memory of Night 2
第32章 雪

「秋から冬にかけては、特に多いかもね。そんな時こそ集客に力を入れて、売り上げを伸ばすチャンス。それに世間一般で浸透してるイベントに乗っかるだけで盛り上げられるから、人を呼ばなくていい分ラクなんだよね、こっちとしては」
「あー、確かに」

 でも飾り付けやら何やら、どうしても面倒な作業は増える気がする。
 ふいに春加がパソコンを閉じ、軽く伸びをした。煙草を灰皿に押しつけ、席を立つ。

「じゃ、気を付けて帰れよ、また……明日入ってたっけ?」
「明日は休み。てか、車で送って、家まで」
「……え?」

 スタッフルームを出ようとした春加が、驚いたように足を止め振り返る。

「チャリじゃないの?」
「チャリだけど。雪降ったじゃん」
「……積もってないだろ、全然」

 確かに、振ったのは夜中の二時間くらい。みぞれになり、雨に変わって朝方まで降っていたので、雪は跡形もなく溶けていた。昼間は晴れていたので、道が酷くぬかるんでいる、なんてこともない。
 チャリで帰るのに不便はなかった。
 通勤手段を変えて以降、自分から春加に送り迎えを頼んだことは一度もないので、かなり不振がられているようだった。

「ーーまあ、いーけど。シフト表印刷してくるから、着替えてちょっと待ってて」
「はーい」

 宵は頷いて、奥のスペースのドアを開けた。
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