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Memory of Night 2
第34章 衣装合わせ

 左から順に、春加、宵、晃、通路を挟み右側にはローズで働く女の子が二人いた。
 さらに前の列にローズの従業員が五人。今回の旅行参加者はその十名だった。
 マスターはいない。いろいろ準備があるため、先に土方の別宅に行っているらしい。せめて彼がいれば、この険悪な雰囲気を少しは和ませてくれたかもしれない。
 土方やアメリアもすでに土方の別宅に行っているらしく、後々会うことを思うと宵はそちらも憂鬱だった。
 だいたいどんな格好をさせられるのかも具体的にはわからないのだ。雪の化け物と言いつつ、平たく言ってしまえば雪女。結局また女装、というのもある。
 承諾してしまったので今さら何も言えないが、女性の格好をするのは抵抗があった。おまけに緊縛? もうさっぱり意味がわからない。

(つか、今回の旅行、全然楽しいことなくね?)

 冷静に考えてみると、嫌なことしかないような気がする。
 恋人と過ごせる二泊三日なはずなのに、それすら心配事を呼ぶ。
 それに心なしか、春加の様子もまた沈んでいるような気がした。窓の外に視線を向けたまま、話さない。横顔を覗き見ても、相変わらず仮面のようなメイクの奥の素顔はわからなかった。

「人の顔をジロジロ見んな、金取るぞ」
「賽銭でも投げときゃいい? あんたの顔拝んだらいいことある?」

 春加は振り向き、邪悪な笑顔を宵へと向ける。

「そうだなー、とーっても楽しいことが待ってるよ。東北の氷点下の中での、着物一枚だけの撮影大会が。寒さで死にたくなかったら、とにかく早くマスターやアメリア先生を満足させるような写真を撮らせてあげないとだから、覚悟しとけよ」

 そんなことを言われても。被写体の経験なんてない。
 宵はもう、逃亡したい気分だった。
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