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Memory of Night 2
第35章 同室者

 そこでようやく、春加は手を止めた。というより準備が終わったらしい。
 宵を見上げ、答える。

「人の手が加えられていない天然の洞穴らしいから、危険がないか見とくんだよ」
「危険?」
「車も通れないような獣道の奥にある洞穴だぞ。冬眠中の蛇や熊の寝床になってたらどうすんの。食われる。あとコウモリとか生息しててもヤバイ。どんな菌持ってるかわかんないし」
「……そんな危ねー場所で撮影しようとすんな」
「場所はアメリアが決めたんだよ。あたしに言うな。ビビッと来たんだと」
「……なんだそれ」

 芸術肌な人の感性はわからない。

「つか、なんで今?」
「おまえの写真を試し撮りしてたからだろーが! 照明やら何やら替えて何パターンも撮ったろ? さっきまで選んでたんだよ。車で近くまで運べない場所だから、機材全部は持ち込めない。必要最低限ですむように、アメリア先生と選んだ。……それに、東北の山ん中ってだけでクソ寒いのに、洞穴なんてよけい気温低くなるからね。多分氷点下だよ。そんな場所で何時間も居らんないだろ? 布切れ一枚巻いただけで、死ぬぞマジで。実際撮影する場所に行って、イメージさえ掴めれば、明日の撮影もすぐ終わる。だから今行くんだよ」
「…………」
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