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Memory of Night 2
第35章 同室者

 いっきに捲し立てられ、宵には返す言葉がなかった。全部ちゃんとした理由だった。

「……マスターと?」
「いや、アメリアと。亮は夕食抜けるわけにも行かないしね。撮影に関係ないローズのスタッフ達も来てんのに、置いてこっちの用にかかりっきりにさせるわけにもいかない」

 春加は大型のバッグをベッド横に置き、ショルダーを肩にかけた。
 このまま出かけるつもりらしい春加に、宵は後ろから呼びかけた。

「……あんた、なんでそんな必死なの?」
「は? なんでって」
「新しく店、持つんだろ?」

 部屋を出ようとしていた春加の足が止まる。

「……晃の部屋に寄ったらマスターがいて、言ってた。普通のバーで、あんたを店長にするって。ローズを出ていくのに、なんでそこに貼るポスター作りにそんな必死なの?」
「……これが最後だからだよ」

 春加は呟くように言った。

「あたしがローズのためにできることは、もうこれしかない。新しい店は来年の春頃オープン予定だし、そっちが始まればあいつと一緒に仕事をすることもなくなる。ローズの売り上げに貢献できる唯一がポスター制作だから、妥協したくないだけだ」
「……すげー職人魂だな」

 宵は笑った。
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