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Memory of Night 2
第48章 すれ違いの行方

 口付けてこようとする晃から顔を背け、宵は立ち上がった。
 外見を褒められるのは慣れている。いつもは素直に嬉しいと感じるが、今は逆に腹立たしかった。顔にしか興味がないと言われているようで。

「なんか、怒ってる?」
「別に。シャワー浴びてくる」

 せっかく二杯目を入れてくれたハーブティーだが、飲まなかった。
 寝室に寝巻きを取りにいく宵に、晃が声をかける。

「明日って何か予定ある?」
「別になんも」
「……そっか」

 どこかに出かけようと誘われるのかと思ったが、晃は特に誘ってもこない。
 宵は少し躊躇ってから、呟くように聞いた。

「ーー風呂、一緒に入る?」
「え……?」

 晃の茶色い瞳が、心底驚いたように見開かれる。それはそうだろう。一年近く一緒に暮らしてきて、そんなふうに誘ったことなど一度もなかったのだから。
 むしろ、晃から誘われても狭くて壁も薄いからという理由で拒否してばかりだった。
 晃の顔が一瞬嬉しそうに輝くが、すぐに顔を曇らせ、宵から視線を逸らした。

「……嬉しいけど、まだ洗い物も残ってるし俺はあとでいいかな。ゆっくり入ってきな」
「……あっそ」

 洗い物こそ、あとでもいいはずだ。宵から何かを誘って、そんなふうに適当な理由で拒まれるのも初めてだった。
 ーーやはりもう、自分の体に興味が無くなってしまったのだろうか。

「あ、宵……っ」

 何か言おうと呼び止めてきた晃を無視し、宵は部屋を出て浴室へと向かった。
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