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訪問 パティシエSana
第5章 新しいSana
 林はラボの責任者に合図して事務所に呼んだ。手が空いて来たのですぐに責任者はやって来た。事務所とラボはガラスで仕切られ作業全体を林は確認できるようになっていた。
「お呼びですか」
「少し聞きたいことがあって、そこにいる早苗さんのことです」
ガラス越しで見やった責任者は、
「Sanaさんのことですか」
「Sanaさん?」
「すいません、本人がSanaと呼んでと煩いものでつい」
「勤務態度とかは」
「特に何も問題ありません。少しお節介なところはございますが」
「独身ですか」
「はい、独身です。彼氏と別れて、最近団地に引っ越しをしたようです。」
「そうですか。独身でも団地に住めるみたいですね」と、
 あまり関心がないような素振りであったが『彼氏と別れた独り者』を心に止めた。改めて、Sanaをチラッと見たが『電話です』のコールで話は自然消滅した。
 電話が終わった林は椅子に座ったままで周囲に分からないようにSanaを追い全身から、臀部、腰つきも注視し、特に腰位置と張りを見ながら推測を頭のなかでしていた。

 間違いなく経験済みだが、そんなにはあそこを使っていない。
 が、女の喜びは知っている、それもだいぶ深く。
 新しい男がいて毎日のように可愛がられている、それも最近。
 今朝がた、挨拶されたときの表情は新婚の女の輝きがあった。
 朝、女を見ればそれが出でいるものだ。
 首をひねったのは、逝ったばかりのような表情にも見えたことだ。
 こちらが恥ずかしくなるのは、逝った女に見られたときだ。
 そう、ラボの廊下で逝ったばかりの女に遭遇した、それも早朝に。
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