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訪問 パティシエSana
第10章 パートナー林
 やがて、平然として戻ってきた林はSanaの直ぐ隣に座って、
「Sanaさん、先に行っていて下さい。そう、パートナーSanaさん」と言ってルームカードを手渡した。受け取ったSanaの手をカードごと握って、顎先をちょっと触った。
「では、お先に伺います。パートナー林さん」と顎先を触った林の手を握って言いながら立ち上がった。
 パートナーとなった林はのどの渇きもあって、そのまま座って追加の水割りを飲んで時間稼ぎをしていた。考えさせて止められる時間を女に与えることであった。早くても遅くても駄目である。女の自由意思を保つことで少なくとも合意があった主張できる時間が必要なのである。あの生意気な小娘をどう料理してやろうかと考えに耽っていたのである。怖気づいて居ないかもしれない、居るかもしれない。
それを楽しむ林であった。

 SanaはSanaで室に這入って内部を鑑賞していた。部屋のレベルが私の価値ねと思いながら値踏みをしていた。結構張り込んだわねと思いながら、浴槽にお湯を出しからトイレに入った。持っていた鞄から色々出し、ベッドの周りで何やら作業をした。最後にカーテンを開けてライトの明かりを調整してから全裸になってドアと窓際を往復したのである。暫くするとまたトイレに這入って出てこなくなった。やがて、ジャージャーと音を立てて、浴室で体を洗い始めたのであった。

 林は逸る気持ちを押さえながら部屋の前にやって来た。ベルを押すが反応がない。
  居ないかな。
  居るかな。
  林の鼓動は早くなり喉の渇きが激しくなった。
  林はルームカードで開錠してドアノブを押した。

  ガチャリ

 室内は薄暗くカーテンが開け放たれた窓から街の明かりが煌めいていた。静寂の中に水音が聞こえた。
 風呂に這入っているのだ。
 以外であった。項垂れてソファーに沈んでいるかと思ったが全く別でその意外性が新鮮であった。
 辺りを見渡すとソファーには履いていた青いスカートが掛けられ、テーブルにはハンドバッグ、携帯が無造作に置かれていた。旅行鞄を持っていたはずだが辺りにはなかった。

 窓際で外の街明かりを眺めていると、カチャリとドアの開閉音がした。

 林は振り返って視た。
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