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Kiss Again
第6章 暗い力
「今では 海が わたしのこと お財布程度にしか思っていないことはわかっているんだけど。
わかっていても それを認めると 今までのことが 全部 ゴミクズになってしまう。優しかった頃の海まで ゴミクズになってしまう。
愛されていた、大事にされていたと思っていた4年間がゴミクズだった、と そのことを自分で抱えることが おそろしくて・・・」
「ただ 先延ばしにしてしまって・・・」
「もう愛されることはない、と 認めるのも こわくて・・・」
愛美の涙を 唇でうけとめ 何度も 何度もキスをした。
「どうして 自分の家に 帰りたくないの?」
口元においた愛美の指先が 震えている。
「海のものが いっぱいあるから・・・」
「海が いつ訪ねてくるか わからないから・・・」
「こわいから・・・」
たったの5センチで 人は 人生を終えることができる。
「まだいて ごめんなさい」
そう言った 愛美の言葉が あらためて 胸にこたえる。
見知らぬ酔っ払いの男にさえ ついて行きそうだった愛美の痛みが 胸にささる。
泣きやむまで 背中をなでた。
この細い身体で どれだけ耐えてきたのだろう・・・