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Kiss Again
第12章 再び スターダスト
 久しぶりに『スターダスト』を訪れた。
 ちろん、というベルの音をさせ ドアを開けると 顎鬚をきれいに整えたマスターが 
 「おかえりなさい」 と言った。

 だからおれも
 「マスター お久しぶりです。 なにか食べるもの見繕って」
 と 空白なんてなかったように 言った。

 元カノとふたりして飲みにきて 元カレとヨリを戻したらしい御執心の女の子に ばったり、という気まずさを乗り越えるのは なかなか大変だった。

 しかも 元カノとは その後 ホテルに行ってしまった。
 それっきり、だったけど。

 夏見とは セックスした後 お互いに求め合っていたわけではなかったことを納得できたみたいな感じで それっきりだ。 会社で顔を合わせても 以前のような、見たくもないものを見てしまったような気まずさはなくなった。

 結果として あれでよかったのかもしれない。


 「安部ちゃん ラッキーだね。 いいサーモンがあるよ」
 「いいことがあるような気がしてたんだ」


 ふっくらとしたサーモンのバター焼きにマスタードとレモンのソースがかかり パスタが添えられたものが 出てきた。 だから ここが好きなんだよな。 来てよかった。
 「ハイボールも お願いします」

 ひとりで ここに来るのは 結構勇気が必要だった。
 でも 誰かと一緒に来る気分でもなかったし。

 ドアが開くちろん、という音がすると つい そっちを見てしまう。


 奥の席には 団体さんらしき御一行が占めている。
 おれが通い始めたころは 団体さんの姿なんて 滅多になく 雰囲気を味わいながら 静かに飲む三々五々のお客さんか 大人し目のカップルが多く ひとりで来やすい店だった。

 お馴染みさんと 軽い話をしたり マスターと世間話をしたり 音楽を聴いたり。 居心地の良い隠れ家だった。


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