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フレックスタイム
第7章 入籍と過去の女
「ちょっと俺、出てくるね?」と言って、
多分タクシーを飛ばして早朝から開けている美味しいパン屋さんで、
クロワッサンやデニッシュ、それにカフェオレを買って戻って来てくれた。

「内臓の病気や手術じゃないから、怒られないよね?」と言って、
2人で美味しく食べた。

そして、片手というのは、
思ったより不便なことも自覚した。
無意識のうちに、両手を使っているものだと気づいた。


お昼前に担当医が回診でやってきた。

今日、退院は出来るが、
鎮痛剤や化膿止めなどの薬を必ず服用することと、
経過観察と抜糸の為に1週間ごとに通院すること、
そして、五分五分の確率で、左手の薬指が動かないかもしれないこととリハビリをしていくことを伝えられた。

また、縫合した傷は、
残ることも言われた。


聞いてる私以上に、
翔吾さんが哀しそうな顔で涙ぐんでいるのを見て、

「ほら。翔吾さん、しっかりして?
通院の時は、
一緒に来て、リハビリとかで何をするのか一緒に聞いて、
手伝って貰わなきゃいけないし、
別に指がなくなった訳じゃないから、
大丈夫よ?」と明るく言うと、
先生も少しホッとした顔をしながら、
「明るい奥様で良かったですね?」と翔吾さんに言って出て行った。

残った看護婦さんがガーゼと包帯を交換してくれたのを見て、
傷の長さに翔吾さんは更に衝撃を受けていた。

「カイザーの傷痕に比べたら、
半分くらいなものよ?
大丈夫だってば?」と言うと、
看護婦さんが居るのに、
「百合、俺が代わってやりたかった」と言って抱き締める。


「あらあら。
キスするイキオイですよね?
お邪魔しないようにお部屋から早く出ますね?
退院のお時間、決めたらナースステーションに声を掛けてください。
あ!それと美味しいパン、ご馳走様でした。
みんなでいただきました」と言って、
「仲良しご夫婦さんですね?」と笑いながら出て行った。


「差し入れ、してくださったのね?
秘書の私の仕事なのに、
ごめんなさい」と言うと、

「俺のボスは、百合だからね?」と言って、
優しくキスをした。
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