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フレックスタイム
第2章 秘書室へ
流石にお腹が一杯になって、店を出た。


「歩いても良いかな」と言うので、

「ニューバランスのスニーカーだから、大丈夫ですよ」と笑った。


ケンを真ん中にして、
3人で手を繋いで歩いた。


「ケンは大丈夫なの?
歩ける?」と訊くと、

「全然、平気だよ」と言って、
ギュッと手を握って笑う。


「佐藤さんって、目鼻立ちがハッキリしてて、
ハーフみたいだよね?」


「クォーターみたいなものなんです」


「そうなんだ。
だから英語もペラペラなのかな?」


「んー。
語学は…
ずっと身近だったからかもしれません。
中国語は、中国茶が好きで、
意識的に学びました」


「中国茶?
烏龍茶とプーアール茶しか知らないな。
今度、飲ませて欲しいな」


「じゃあ、部屋着を取りに行く時に、
茶葉と茶器も持って行きますね」


「クォーターみたいなものって?」


「母方の祖父が、イギリス人とフランス人とのハーフだから…
正確にはクォーターじゃなくて1/8ずつ、ですかね?
でもって、
母方の祖父母は、今はロンドン郊外に住んでるんです」


「ご両親は?」


「広尾に。
父方の祖父も同居してて、祖母は一昨年亡くなりました」


「結構近くに住んでるんだね?
兄弟は?」


「ひとりっ子です」


「それは、俺と一緒だな?
寂しかったから、
ケンには兄弟、作ってあげたいんだよね」


「はぁ…」
なんて言って良いか判らなくて、
間抜けな返事をしてしまった。



ケンは、話を聞いてるのかどうか良く判らなかったけど、
嬉しそうにスキップしたりジャンプをしていた。
そのうち、眠たくなったようで、
途中で社長がおんぶすることになった。


「夜のお散歩、良いね。
たくさん話が出来る」


「どっちかと言えば…
尋問されてるみたい」と言って、
笑ってしまった。


「佐藤さんのこと、
何でも聞きたいし、
知りたいな」と、
クシャっとした顔で笑った。


そんな顔して笑うこともあるのかと思ったら、
なんだか可笑しくなってしまい、
私も笑ってしまった。



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