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フレックスタイム
第5章 辛い過去
夜中に警察から連絡あって駆けつけた時のことが、
フラッシュバックした。


赤色灯の回る色
色々な声
ドアを開けて室内に入った時の病院独特の匂い…

目眩がして気を失いそうになる。


「百合?
大丈夫?」

私は意識を引き戻して、
物語の結末を話した。


「おそらく最後の調停期日になると言う日、
夫は家裁に来なかった。
先方の弁護士さんが、
『連絡がつかなくて…』と言っているのを聞いて、
とても不安になって、
『念の為、家に行ってください』とお願いして、
その日は相手方不在のまま終わったの。
一応、その弁護士さんは家には行ってくださったけど、
留守のようだと連絡してきて。
でも、物凄く不自然な話だし、
嫌な予感がして、
家の中まで入って欲しいと強く言った。
でも、そこまでは出来ないと言われてしまって。
それで、家裁の調査官の方と自分の弁護士さんにも相談して、
児童相談所から警察に働きかけて貰えたのが、
その日の夜中だったの。
『子供を取られるくらいなら、
殺してでも渡さない』と、調停で口にしていたことを強く伝えて、
子供に危害を加える恐れがあるからと。
もっと早くに動けていたら…。
無理矢理、ドアを蹴破ってでも中に入れば良かったのに…」


あの時のことは、今でも夢に出てくる。
身体が震えてしまうのを、
社長がしっかり抱き締めてくれる。


「とにかく、警察と児相が動くから、自宅で待機するよう言われていて、
夜中に連絡があって夫の家に行った時にはもう…。
息子は夫の病院のベッドに寝かされていて…
毒物を注射されてて、既に絶命してたの。
既に死後硬直が進んでいて…。
そして、夫は…
奥の部屋で、首を吊ってた。
遺書には、
『百合は怖がるだけで僕を受け入れなかった。
息子は僕だけのものだ。
誰にも渡さない』と書いてあった。
私が黙って離婚して息子を残していけば良かったのかも…。
あるいは強引に夫から息子を引き離してしまえば…
あと1日か2日早く保護していれば…」


私は震えながら、気を失っていた。
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