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蒼い月光
第3章 くのいち ウズメ

「ウズメ…その赤子は?」

忍衆の頭、黒炎(こくえん)は、
戦場から少し離れた川原で赤子を抱き抱える
くノ一のウズメの姿を見つけた。

「首領、戦場の川原で
死んでいた農民の女が
抱きかかえていた赤子でございます」

流れ矢に当たったのであろうか、
川原に農婦の死体が転がっていた。

「その赤子をどうする?
川原の女の手の中で
朽ち果てるのがその子の定め…
人の定めをむやみに弄んではならぬ!」

首領と呼ばれた黒ずくめの男が
ウズメと呼ばれた女忍の腕の中で
スヤスヤと眠っている赤子を睨みつけた。

「赤子に罪はございません。
母親は武士の戦に巻き込まれ
命を落としたのです。
何事もなければ、この子は健やかに育ち、
親と共に田畑を耕していたはずでございます」

「ではウズメ、お前が抜け忍となり、
その子を育て田畑を耕し生きてゆくか?」

「そ、それは…」

ウズメとて
忍びの世界しか知らぬ女であったので、
赤子を連れて野里に放りだされても
生き延びる自信はなかった。

だが、一度その腕に抱いた赤子に
情が移ってしまっていた。

この子を手放したくない…
思わず赤子を抱く手に力が入った。

「まあよい…ウズメ…
その赤子とともに我らの隠れ里にもどれ!!
そして、その赤子と静かに暮らすが良い!」

やさしい言葉とは裏腹に
首領の手はウズメの尻を撫で始めた。

「しゅ、首領…?」

「タダで戦場(いくさば)を
退かせてゆくわけにはいかぬ…
それなりの罰を与える」

そう言うとウズメは
あっという間に装束を脱がされた。



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