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蒼い月光
第2章 千代

3日後には、佐宗家より
一人の女子(おなご)が嫁いできた。

城の門前で、その女子(おなご)の一行が
足止めを喰らっていた。


「城内に入るのを許されているのは
嫁いできた女子(おなご)だけである!」

門番は、城主の言いつけを守り
姫の連れの者たちと
小競り合いを繰り返していた。

その様を、剣山は天守閣より密かに見ていた。

「殿…このような無礼をしてよいのでしょうか…」

家臣は、内心ハラハラしながら顛末を見送った。

たしかに佐宗家は小さな国であるが、
我が佐山家以上の国に
同じように縁組をしていたら…

近隣の小国には勝算があっても、
彼方より大軍が攻め入ってきたならば
ひとたまりもなかった。


「牛車が一車だけの貢ぎ物か…
この、剣山も安く見られたものよのお…」

その荷台にしても、
姫君の衣服、味噌や米が大半で
剣山の考えている金銀なるものは、
ごくわずかだった。


突き刺さるような剣山の視線を
感じたのであろうか、
眼下の駕籠(かご)が開き、
その中の女子(おなご)がふいに
顔を出して剣山を見上げた。

娘の顔を見た瞬間、剣山は恋に落ちた。
それほどまでに娘は器量がよかった。

「ほお~、これはまた、
えらいべっぴんを嫁がせたものじゃ…」

家臣も見とれて思わず感嘆の声を漏らした。

「中に入れてやれ…」

「は?」

「あの女子(おなご)の従者たちも
城内に入れてやれ!
今宵は宴じゃ!祝言の宴を開くぞ!!!」

剣山は、いよいよ我が身に春が来たと
有頂天になっていた。



城主の号令ひとつで、
たちまち城内は活気にあふれ出した。
間近で姫君の顔を見た剣山は大はしゃぎだった。

美しい姫君を嫁がせた佐宗家に
お礼の親書を書き、
姫君を連れてきた従者に手渡した。

来るときは牛車が1台であったが、
帰路の際には褒美の荷物を受け取らせ
3台に増えていた。

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