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TRUE COLORS  ~PURPLE~
第9章 Lily of the valley
ふとシャワールームで思い出していたことが頭をよぎった。

「オー ドゥ ナルシス ブルーをご存じでしたので。

 お詳しいなと勝手に思ってしまいました。」

そう言い、微笑みかけると。

フと自分から目を逸らす彼女に面食らう。

何故、目を逸らす?

「昔。子供のころなんですけどね。」

目を逸らしたまま香水がレイアウトされたショーケースに向かって

ゆっくり歩み寄っていく。その先は。

彼女の前には水仙の香りが調香されている製品。

俺があの日着けていた香水。

「ギリシャ神話題材の絵本が大好きだったんです。」

ギリシャ神話?

「エコーとナルキッソスっていうお話、です。」

ナルキッソス。

ああ、池に映った自分の姿に恋い焦がれて

終いには池に落ちて死んでしまうという、あの話か。

誰も愛せず、己だけを愛してしまう哀れな美青年の。

「ナルキッソス。彼が池に落ちて亡くなってしまった

 池のほとりに咲いた花。水仙の語源です。」

そう言うと、彼女ゆっくり振り返り。自分を見上げる。

…………水仙の語源もだけど、ナルシストの語源でもあるのよ。

と言われてるようだった。

「その絵本の挿絵が、ナルキッソスの挿絵がとても好きで。」

そしてまた彼女は視線を逸らし

「ナルキッソスの香りがとても好きになって。」

そっと俯き目を閉じる。

「あの時。そのナルキッソスの香りが朝比奈さんから……。」

そうだ。彼女とはこれまで2度会った。

確かにその2度とも、俺は水仙の香りが調香されている自社製品を使っていた。

あの時、がどれを指し示しているのか。

自分に直に問いかけた時か

それとも。

図らずとも彼女の肌の質感を感じた、あの時か。

そう思った時、得も言われぬ感情に心が支配され、堪らず

「そうでしたか。

 ………さ、ご希望のすずらんモチーフのアクセサリー数点御座いますから、

 参りましょう。」

と、この話題を無理矢理切り上げるように先を促す言葉で、遮る。

彼女は俺の言い様に一瞬ためらいを見せたが

はい、と素直に頷き。俺に案内されるままおとなしく着いて来た。





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