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TRUE COLORS ~PURPLE~
第10章 Each night(それぞれの、夜)
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「ねぇ、エコー。エコーってば!」
私に向かって誰かが声を掛けている?
私の事なの?と目の前の少女にと問いかけたいが、
私の口から零れだす言葉は、
先程私に向かって発せられたのと同じ言葉のみ。
目の前の少女が、そんな私を不思議なものを見る目では見ておらず、
それをごくごく普通のあたり前なことなのだというように受け止めていて。
全く気にしないまま。
「ね、この森の中に、とってもとっても美しい男の人がやって来たわよ!」
と私の耳元でそう囁く。
いたずらっぽい目で私の顔を覗き込み、行きましょ、と私の手を引いて。
その男の人がいる場所まで、ふわふわと案内していく。
あ。私。妖精エコーになっているの?
エコーとナルキッソスのお話の中に来ているんだ。
薄いベージュのキャミみたいな短い丈のワンピースを纏い。
背中には半透明の蝶のような羽が付いていて。
そんな姿の少女と同じ格好をしているわ。私。
少女に手を引かれながらふわふわと飛び、森の中を抜けていく。
凄い。私飛んでるわ。
やがて。森の木々が開けた場所の前までやって来ると。
男の人と女の人の言い争う声が聞こえてくる。
「どうして?あの時あなたは私を抱いてくれたじゃない!
愛してくれているんじゃ、なかったの?」
ふわふわな長い栗毛を背に垂らし、サイドの髪を編み込んで後ろで留めて。
蒼い花を飾りに数本挿している。
彼女の瞳もその飾りにしている花と同じで、蒼く。潤んでいる。
ネモフィラ?
確かネモフィラの英名は。“Baby blue eyes, Nemophila”
blue eyes 確かに彼女の瞳はネモフィラの蒼と同じ。
「Nemophila」は、ギリシア語の「nemos(小さな森)」と
「phileo(愛する)」を語源とし、
原種が森の周辺の明るい日だまりに自生することに由来する。
蒼い花の中心が白いその花姿から英語では
「Baby blue eyes(赤ちゃんの蒼い瞳)」と呼ばれており、
花言葉は 「success everywhere(どこでも成功)」
「Pretty(可憐)」
「Forgive you(あなたを許す)」
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