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TRUE COLORS  ~PURPLE~
第10章 Each night(それぞれの、夜)

そして、Pretty可憐という形容詞がぴったりな女性だ。

「よしてくれ。君がひとり楽しんだだけの情事だ。

 君のことなんか、これっぽっちも愛してなんか、いない!」

そう叫び、自分に縋って来る女の人を払いのける男の人。

え?朝比奈さん?!

払いのけられ、その場に崩れるように座りこむ彼女。

そして、俯きポロポロと涙を流し

「ひどい。」

そう短く自分を詰る彼女をまるで汚いものを見るような目で

見下している朝比奈さん。

朝比奈さんって、あんな表情女の人に向けるんだ。

もし、私に。

あんな目を向けられたら。

ブルッと身震いする。考えただけで恐ろしい。

立ち去ろうと踵を返した朝比奈さんの背に向かって彼女が叫ぶ。

「所詮あなたは、他人を愛せない可哀そうな人なのよ!」

涙をボロボロ零しながら朝比奈さんの背を睨みつけながら

「自分の美しさだけを愛する人だなんて、嘘。」

え?

「人を本気で愛して。

 愛して愛して。狂おしいほど愛した人とやがて訪れる別れの時に。

 自分が傷付くのが怖いだけの、ただの弱虫よ!」

ナルキッソスのお話じゃ、ない?

私の方からじゃ、朝比奈さんの表情は全く見えなくなっちゃたけど。

「傷付くのが怖くて!

 自分の美しさしか愛さないだなんて嘘の予防線を張って!

 自分で自分を抱きしめることしか出来ない、

 哀れな男なのよ!朝比奈!あなたって男は!」

え?

え?

どう、いう、こと?

朝比奈さんが。哀れな男?

大きな木の枝につかまって、

彼らの様子を少女と伺っていたのだけれど。

オトナの男女の言い争いの様に飽きてしまった少女が

帰ろうよと私の服をグイグイ引っ張る。

それにバランスを崩し、枝から落っこちそうになりキャッと声を上げる私たち。

その声を聞きつけた朝比奈さんが

「そこにいるのは、誰だッ!」

と鋭く叫び、振り返ったその目を見てしまった。

木から転げ落ちながら。見てしまった。

彼の苦悶の表情の中にある、涙で潤んだ、哀しい目を。


背中に羽が生えているはずなのに。

木から転げ落ち、頭をゴンッとぶつける。
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