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本当の私の見つけ方
第1章 1
「ここだよね?」
その後、電話で話をした私は彼の家に行くことにした。
彼か一人暮らししているアパートは何の変哲も無い、リビングに簡単なキッチンのついた狭い部屋だった。
部屋には最低限の、ベッドと机と、本棚にいくつか難しそうな本が並んでいるだけだった。

彼は私を適当な場所に座らせると、冷蔵庫から缶ビールを2本取り出すと私に一本勧めてきた。それを私は無言で首を振って断ると、彼はベッドに腰掛けた。

「それで、」
と、彼が切り出した。
「なんで君が無理してると思ったのかについてだけど、なんとなくだよ。」
私は黙って聞いていた。

「君は自分のことが好き?」
急な質問に戸惑った。私は、私のことが好きかどうかなんて、あまり考えもしなかった。

でも、私はずっとなりたい自分を目指してきたし、そうなってきた。

そう伝えると、彼は微笑んだ。
寡黙で、あまり笑わない人だったけど、時に見せる彼の微笑みは、いつもどこか悲しげだった。

「じゃあ、今日までたくさん頑張ってきたんだね。」

私はその一言を聞くと、不意に涙がこぼれた。
私はそんな姿を見られたくなくて、目をこすって誤魔化した。そんな私を、彼はじっと見ていた。

「じゃあ、私はどうしたら良い?」
彼は、うーんと考えてから、
「本当の自分を見つけたら良いと思うよ。」
と答えた。
「本当の自分?」
「そう。」
「そんなのわからないよ。それが何かもわからないし、どうやって見つけるのかもわからない。」
「難しいよね。」
そう言って彼はまた微笑んだ。

「本当の君は僕が見つけてあげるよ。」
「えっ。」
私は驚いて顔を上げた。
「君はもう強くなくていい。僕の前ではね。弱い君でいいんだよ。」

弱い私。
その言葉に仄暗い安心感を覚えた。

「どうしたら弱くなれるの?」
「簡単だよ。負けたらいい。」
「負ける?」
「そう。僕や、自分や、異性、同性。先輩、後輩。目上の人、そうじゃない人。関係なく、全ての人に負けたらいい。」
「どうやって負けたらいいの?」

「教えてあげる。」
思えば、全ての始まりはここからだった。
「近くに来て。」
私は、何の疑いも持たずに、ベッドに座る彼の手が届くところまで来た。
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