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Kiss Again and Again
第12章 旅愁

 ありふれた田舎町を 車が走る。

 刈り終えた稲が 逆さに吊り並べられていたり 黒い土が長い畝を作っていたり 半円のビニールの筒が行列になっていたり。 ガードレールには 枯れたススキが覆いかぶさっている。 遠く間隔をあけて建つ家はあるのに 人の姿は見えない風景が いつまでも続く。

 レンガ色のシャツを着て運転する樹さんは この風景に 決して溶け込めない。 それなのに 上機嫌で ここの住民のように振舞っている。

 道端の 観光地めいたささやかな看板のお誘いを 一度も断らず まめに車を停めては 覗きに言った。 何度 失望させられても 看板を見つけると 「いってみよう」と 飽くなき挑戦を続ける。 当たりクジが出るまで諦められない子供のよう。

 慌ただしい日常が追いかけて来ないのを 感じたいのかもしれない。
 目指すところに 急いで到着する必要がないという 旅のきままさが 樹さんをご機嫌にしている。


 「紅葉には まだ早かったね」
 その言葉が 身体に沁みこんでゆくのが 温かく心地いい。

 部屋についている露天風呂は 素晴らしかった。 縁側を張り出したように屋根がついていて 雨の日にも 景色を楽しみながら温泉で寛ぐことができる。 隣には宿泊客がいないのか とても静かだ。

 「一緒に入ろっ」
 言うと思った。

 「樹さん おひとりでゆっくり浸かってください。 わたしは大浴場に行ってきます」
  「えっーーー なんでぇーーー こんなに素晴らしいのに もったいないでしょう?」
 「お食事は 7時ですって。 それまでには戻ってきますから」

 紅葉には早い平日のせいか 浴場は空いていた。 そこにも露天風呂があり 夕暮れを楽しみながら 温泉に浸かった。 その豊饒さに 身体と心の隅々までゆるんでゆく。

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