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Kiss Again and Again
第12章 旅愁
ここに来る前に決めていた。
流されよう・・・
樹さんのお陰で 傷口からは もう血は滴り落ちていない。 そして 癒えはじめている。
この人と過ごす心地よさに 甘えよう・・・
やっと 普通に生活できる自分が戻ってきたのだから。
旅館の浴衣に半纏を羽織り 部屋に戻ると 樹さんがいない。
いた。。。 部屋付の露天風呂に入っている頭が見える。
「いかがですか? 念願の温泉は?」
「すごーーーく いいっ。 あゆちゃんも入ればよかったのに」
「大浴場も 人がいなくて よかったですよ。 しっかり温まってきました。 温泉に浸かりながら ビールはいかがですか?」
「いいね。 冷えた白ワインだったら もっといいのに」
「そこまでワガママ?」
缶ビールの栓を開けて差し出すと 美味しそうに飲む。 なんか しあわせ。
わたしも作り付けの椅子に腰掛け ビールを飲んだ。
「連れてきてくださって ありがとうございます。 ここからの眺めは ほんとうにステキですね。 心が洗われます」
「こちらこそ 一緒にきてくれて ありがとう」
「15万円 無駄にならなくてよかったですよね」
「ほんとは ひとり15万円」
「えっ!? 二泊三日で30万!?」
「ほんとのこと言ったら あゆちゃん 来てくれないかな、と思って」
そうだったかも・・・ 30万円には 引いたかも・・・
「僕には それ以上の価値がある」
・・・ん? ほんとうに頂き物?
その気持ちに気がついたように ゆったりと笑いながら
「今 何時くらい?」
「6時を過ぎたくらいです」
「もう上がるから そこのタオルとって」
タオルを渡そうとすると 強く手をひかれ そのまま湯船に引きずり込まれた。