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Kiss Again and Again
第14章 新しい扉
いつまでたっても 「あいたい」のひとことは言えなかった。
樹さんにはお仕事があったし コンクールに出場するために 忙しそうだ。
海が 社会人になったときも 時間に拘束され 急に身体が重くでもなったかのように身動きができなくなった。 学生とは違う。
ほのかちゃんは 「今、逢えるかどうかが大切なんじゃあなく 逢いたいと思っているかどうかが大切」だと言っていたけれど。 わたしの気持ちなんかが大切だとは思えない。
そうしているうちに 旅行から帰って 一ヶ月が過ぎてしまった。
秋が深まり 電車の中は コートを着た人たちが増えてくる。
この季節になると 必ず高梨さんを思い出した。 あんなに潔い別れができるなんて どれだけ優しい人だったのだろうと 今では思う。 寂しいときは あの美しいゲイ友に逢いたくなる。 「あほやなぁ」という声を聞きたくなる。
元気だろうか・・・