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Kiss Again and Again
第16章 最後の扉
「樹さんの背中も好きだけど 胸も 負けないくらい 好き」
柔らかい産毛のような胸毛を 手袋をした指先に絡めながら
「前の男に 胸毛があったかどうかなんて 憶えていない」
思い出せないから きっとなかったのだと思うのだけど
「樹さんの胸毛は 好き」
「僕も 昔のことは 完全燃焼しちゃったから なぁにも憶えていない」
完全燃焼?
きっと この人ならそうだろうな。
ひとつ年上の人とつきあっていたって。 その人と 舞台をやっていたって。
「ひとりの人と長く続かない」樹さんが 何年もともに過ごした人。 何年も こんな風に肌を合わせた人。
樹さんが 海に「煮えたぎるような気持ち」になったのが わかる。
過去には 敵わないのに。
「あゆちゃんだけで いっぱい」
あなたは「いらない」と言ったけど わたしもあなたで いっぱい。