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Kiss Again and Again
第16章 最後の扉
「ねぇ・・・ Make love っていうよね」
「うん。 英語では」
わたしたちは まだ繋がったままだ。
「愛し合う、って いうよね」
「そうね。 愛し合う、っていう。 フランス語では なんて言うのですか?」
「faire l’amour」
耳に息がかかるように 言う。
「あゆちゃん 愛のないセックスなんて ないんだよ」
首を捻り 樹さんの額に 自分の額を押し付けた。
「今 わたしたちは 愛し合ったの?」
「そう。 違うの?」
「ううん。 愛し合った」
いつも 怖いくらいに気持ちがいいから 心がなおざりにされているような気がしていた。 それが とても不安だった。
このとき 初めて気がついた。
この人も 怖いのだと。
愛が 残酷なやり方で 裏切ることを知っている。
愛が裏切る苦しみを知っている。
その裏切りが待っているところへ 向かおうとしているのではないかと わたしと同じように 怖がっているのだ。
わたしたちは 似たもの同士で お互いに向かって延べた手を うまく繋ぐことができない。
「どうして・・・泣くの?」
泣いているの? 気がつかなかった。
「たぶん・・・ うれしいから」
キスが降りてくる。 愛おしさを伝えようと 地球規模ですごい男の唇を吸った。