この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Kiss Again and Again
第4章 デート

葛飾柴又ツアーは それなり 楽しかった。
2年生の子たちと 露店をひとつづつ覗いては 笑い転げたり 何かしら買い物したり 試食したりした。
焦らず ひとつづつ丁寧に過ごしていけば 普通が取り戻せるはずだと思えた。
経栄山題経寺の境内で 新入生たちと鳩に餌をやっている立花先輩をみかけたので
「先日は イヤな思いをさせてしまったら ごめんなさい」 と言えた。
先輩は 「ん?」 と言った後で
「お詫びの品は あそこのお団子でいいよ」
笑顔が返ってきて ほっとした。
だから 帰りに 多分このお店のことだろうな、と思った和菓子店で お饅頭を買った。 最後の飲み会で 渡すつもりだった。
「これ お詫びのお饅頭です」
と 立花先輩に差し出すと
「えっ? ホントに 買ったの?」
「はい。 このお店のことですよね?」
「そうだけど。 ホントに買ったんだ。 冗談だったんだよ」
「これ どれだけ買ったの?」
「30個」
「30個も? 誰が そんなに食べるの?」
なぜか 立花先輩は 笑っている。
「先輩は 甘いものがお好きなのかと思って」
「いくらお好きでも 30個は 無理でしょう?」
立花先輩は 声を出して笑っている。 美しい顔が 途端に 幼くなる。
「高梨が 入れあげるだけのことはあるね、仲村さん、って」
それから 「仲村さんから お団子の差し入れだよ」と 飲み会の席で みんなに振舞った。
後から 立花先輩は 甘いものは苦手なのだと 聞かされた。

