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Kiss Again and Again
第21章 はじまりは こんな風に
海は 毛布にくるまりながらスツールに腰掛け わたしが料理する様子を見守った。
「半熟卵をのせますか?」
「そうだね。 昔、昔 誰かのためにうどんを作ったとか? あたり?」
返事をしない。 あなたまで傷つけることはない。 わたしひとり 傷つくだけで充分だから。
「味見をしてみて」
おつゆを入れた小皿を差し出すと 口を尖らせてすする。 ふっと 胸が温かくなった。 毛布を纏い この人は お熱で潤んだ目を 片時もわたしから離さない。 なんて無防備で痛々しいの?
「舌が馬鹿になっているから わからないよ。 でも美味しい」
矛盾したこと言ってるの わかってる?
「はい。 こちらでどーぞ」
出来上がったおうどんをローテーブルに置くと
「あゆのは? 食べないの?」
「おどんぶりがひとつしかないから 海が食べ終わったらいただきます」
「一緒に食べたいのに・・・ なにか器はないの?」
あるとしたら お汁椀?
少しだけお汁椀におうどんをよそい 海の隣で食べた。
やっぱり塩味が足りないような。
「薄味でしたね。 ごめんなさい」
「すごーーーく美味しい。 すごーーーくうれしい」
なんだか海は 風邪をひいてこうしている時間に ありのままの姿を晒しているかもしれない。 気取らなさが好もしい。
洗い物を終え テレビを観ているふりをしている海のラブチェアの隣に座った。
「お薬も飲んだし これで良くならなかったら自信喪失」
「多分 僕の 良くなりたくない気持ちの方が勝つ」
「やることはやったのだから 良くならなくても 追い出します」
「いやいや。 あゆは そんな薄情なことはしないよ」
「あら。 とんでもないかいかぶり。 わたしは冷酷な女なのよ」
「ほぉ・・・ そのまだ見ぬ冷酷さを 是非 拝見したいものですね」
「お安い御用です」