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Kiss Again and Again
第5章 はじまりのはじまり


 最初は 同じカフェテリアでのことだった。

 ほのかちゃんと 他に二人の英米文学科の子達と レポートをまとめている時のことだった。
 わたしの缶コーヒーは テーブルの端の方に置いてあった。 誰かがぶつかって 缶コーヒーが倒れた。 コーヒーは 三分の一位しか残っていなかったけど 教科書やレポートを濡らすのには充分な量だった。 慌てて 本やノートを避難させていて 缶コーヒーを倒した人のことは見ていなかった。

 「あーあ ごめんなさいね」
 「いえ。 大丈夫です」

 他の三人も手伝ってくれる。 慌ただしく タオルハンカチで拭いたりしている間に 缶コーヒーを倒した人は いなくなっていた。
 ほのかちゃんが 「なに? 今の? 自分が倒しておいて 謝っただけ? 手伝いもしないなんて」と怒ってくれる。
 「わざとじゃあないんだから いいよ」
 「あゆ。 白衣着ていたよ。 医学部のひとじゃない?」
 「わかんないけど もういいよ。 こぼれただけだから。 みんなも ごめんね」

 こぼれたコーヒーを拭いたタオルハンカチを洗いにトイレに行こうと 白衣を着た何人かの女の人の後ろを通る時 「わざとにきまってんじゃん」 「ばっかじゃないの」と話しているのが聞こえた。

 
 わたしのこと?
 いまのは わざと、だったの?



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