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Kiss Again and Again
第5章 はじまりのはじまり
他愛もないおしゃべりをしながら 助手席で ワイパーの動きを見ていたら いつの間にか眠ってしまった。 目が醒めると どこかの駐車場だった。
「あっ・・・ ごめんなさい。 ねてしまって」
「可愛い寝顔を堪能させてもらった」
せっかくのドライブで 眠ってしまったのに 機嫌を損ねている様子はない。
「わぁ はずかしいっ」
「あゆは こんなに無防備なのに どうして 僕を受け入れることができないんだろう? どうして?」
寂しげな声。
雨のせいで 車の窓は曇っている。 郊外のカフェの駐車場だろうか。
「わたしにも わかりません。 どうしてなのか どうすればいいのか 自分でも知りたいです」
こんな切なげな先輩の顔は 見たくない。
シートベルトをはずし 初めて 自分から キスした。
ゆっくり唇を舐めたあと 舌を絡ませながら 先輩の髪の中に 手を搔き入れた。
「キス 上手になったね」
「先生がいいから」
しばらく 夢中になってむさぼり合うようなキスをした。
車の窓ガラスの曇りが 濃くなってゆく。
これは 大人の恋愛への 大きな一歩のような気がするけど 先輩にとっては?
そこは古民家カフェで 和洋折衷のランチプレートを頼んだ。
縁側の席に座り 大きなガラス戸から眺める庭の風景は 雨のせいで 静かで陰気だった。
お店の人は 口には出さなかったが 先輩のことを憶えているようだった。 初めて来たのではない。 誰と? どんな女の人と来たの? こんな時には 必ず そんな考えが頭をよぎった。
イケメンも不自由よね。 どこに行っても憶えられて 連れから「誰と来たの?」と勘ぐられる。
胸が いたい。