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Kiss Again and Again
第6章 はじまり
金曜日の夜だった。 珍しいことに 先輩から電話が架かってきた。 いつもはラインなのに、と 急いで電話に出ると
「あゆ 今 どこ?」
「家です」
「家にいるんだ。 これから行ってもいい?」
これから? もう10時になる。
「車だから 2,30分で着くけど」
「いい・・・けど・・・」
どうしたのだろう? こんなことは初めてだ。 自分のことを『火曜日の女』と自嘲的に呼んでいたのに。 今日は金曜日。
明日はお休みだから お風呂に入り ゆっくりDVDの映画を観ていたところだった。 まさかパジャマで迎えるわけにはいかないので ゆったりとしたワンピースに着替えた。
30分ほどすると インターフォンで呼び出された。 ほどなくしてチャイムが鳴る。 ドアを開けると 肩で息をしながら 先輩が立っていた。 まるで 走ってきたように息を切らせている。
「あゆ」
「何か あったのですか?」
顔を見るやいなや 抱きしめられた。
「あゆ・・・よかった・・・いてくれて」
わたしを抱きしめながら靴を脱ぎ そのままリビングまで後ろ歩きで移動した。
「どうしたの? 何かあったの?」
いつもと違うから 不安になる。
「さっき 事故を見たんだ。 ひどい事故で 運転手は助からないかもしれない」
「まぁ。。。」
「それを見たら 人間って いつ どこで 何があるかわからない。 こんな風に運転している自分の身にだって あんなことが起こるかもしれない。 あゆだって 明日は死んでしまうかもしれない、と思って」
それで こんなに急いで逢いにきてくれたの?
「じゃあ 明日 死んだりしないよう 気をつけます」
「気をつけていたって なにが起こるかわからないでしょう?」
それじゃあ どうすればいいのでしょうか?
「もし 明日死んでしまったら もうあゆには逢えないし もう抱きしめることもできないんだと思ったら・・・」
「でも 多分 明日は 死んだりしないと思います。 出かける予定もないし」