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女流作家~君を愛すればこそ~
第9章 新しい愛の形

「お安いご用ですよ」

朝食の後片付けもそこそこに
晃は車のキーを手にすると出かける支度を始めた。

「では先生、私はこれで失礼します
次回作の打ち合わせについては
後日ゆっくりとやりましょ」

節子はトランクを手にすると
先に玄関を出た晃を「待ってくださいな」と
足取りも軽くドアを出ていった。

『何なのよ!
いったいどうしちゃったのかしら…』

晃が、あれほど毛嫌いしていた節子を車で送る?

昨日までの晃なら
車という閉塞スペースに
彼女と一分もいたくないと思っただろうし、
自ら家まで送るなんて
決して言い出したりするはずがなかった。

『昨夜、私が酔いつぶれてから
和解したのかしら?』

それならそれで好都合かしらと桐子は思った。

これで心置きなく、
いつでも節子を我が家に呼び寄せる事が出来るわと桐子は自分なりに解釈していた。


その頃、快適に車を走らせていた車内では…

「いいんですか?先生を独りにして」

節子は男という恐怖心と嫌悪感を消してくれた晃に
すっかり心を許していた。

レズビアンでは得られない快感を教えてもらって
新たな可能性に心ときめかせていた。

そう、俗に言われる二刀流というやつである。

『私は女も男も愛せるようになったわ
言うなればハイブリッドというやつかしら』

晃が所有するガソリンと電気で走る車になぞらえて
満足げに微笑んだ。

「桐子は独りでも大丈夫さ
芯の強い女だからね」

しかし、そんな強さを晃に見せながら
母親の芳枝には
僕が抱いてくれないと泣き言を言っていたので
強く見せているのは文字通り
強がりなのだろうとは思う。

『今夜あたり、抱いてやるとするか…』

節子にレズビアンの味を教えられた桐子が
再び男に抱かれたときに
どのような反応を示すのかも興味があった。

「あ、今夜は先生を抱こうと考えているでしょ?」

ずるい人ねと
節子は運転する晃の太ももをつねった。


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