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胡蝶の夢
第3章  深淵 




黒崎には性別なんてどうでもいい様だった。


誰かを支配するその感覚に酔っているのだ。




「はなせっ…」




手は手錠に繋がれ、足は上に乗り掛かっている黒崎によって踏まれる形で床に磔にされている。


体力の差なのか、首を絞められていた事でまだ力が入っていないのか、ビクともしなかった。


カシャ…


ベルトに手がかかる。


まさか。




「ふざけるなっ……、黒崎ぃぃ!!」




男に抱かれる趣味はない。


暴れる度に手首の手錠が食い込んだ。




「ふざけているのはお前だよ、瑞貴【たまき】…」




抵抗虚しく纏っていたものすべて引き剥がされてしまう。




「近寄るなっ」



「お前の言葉は一切の権限を持たないと言っただろう?」




黒崎の手が伸びる。




「だが…、こうも言ったはずだ…」



微かに僕の前髪を掻き上げる様に触れた。



「強情なのは嫌いじゃない…、もがいて拒絶の悲鳴をあげるほどに……唆る」









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