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胡蝶の夢
第3章  深淵 




「うっ…、はぁっ……あぅ」



その衝撃を全身で受け止める


拘束された状態では暴れることさえままならない。


ただでさえ手首にくい込んでいた手錠が、ギチギチと手首を痛めつけているのだ。



「い…やだっ…あぁぁぁっ」



声をあげる事しかできない。


まるで鋭い針を身体に打ち込まれて標本にされた、哀れな虫みたいだ。


なんて惨めな刑徒だろう。



「酷くされた方が艶やかな声をあげるじゃないか…」



「そんなっ…じゃ…ない…」



痛みに涙が流れる。


瞬きをする度に粒になって流れていく。



「酷くじゃなくて、気持ちよくなりたいのか…?」



散々いじられて赤くなった胸の突起に再び黒崎が吸いつく。


ちゅっ


ネズミが鳴く様な小さな音がした。


同時に激痛でしかなかった指がネットリと動き出す。


体温までもが淫らなものに変わる。


冷たい指だ。



「んっ…」



引き摺られる。


この手に引き摺られていく。


快楽という名の深淵の底に引き摺り込まれてしまう……。





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