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祈り姫 ~甘い香りに惹かれて~
第5章  ~初めての恋は甘くて切ない味~

 中庭にある回廊の先に執事長室はある。

 春のそよ風が日に暖かくなって来た。
 夏が近づいているのだと陽気な太陽が美しい中庭を照らす。
 
 だけど心は何処か寒く気が落ち込んでしまう。


「兄様とふたりきりは久しぶりな気がする」

「そうだな」


 王宮に仕え二ヶ月がたつ。

 春に誕生日を迎え母と代わり祈り姫となった。
 小さな村で育ったサクナにはきらびやかな王宮での暮らしはいまだなれない。


 サクナの村よりも広い敷地建つ圧倒するような大きな王宮の建物、中庭に続く城庭その全貌はまだわからないところばかりである。

 他の人たちがどのように暮らし王宮に務めているのかも正直わからない。

 ────何もわかっていないない、その通りなんだ。

 陛下と出会い祈り姫として過ごす日々、作法や礼儀を習うも、王宮の歴史や知識は国民が知っている範囲の者でしかない。

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