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祈り姫 ~甘い香りに惹かれて~
第5章 ~初めての恋は甘くて切ない味~
「兄様、陛下が祈り姫を護るのが役目とは?」
「その話は夕餉の時にでも話そう、あまり人に訊かれていいものではないからな」
中庭や回廊には貴族の娘や使用人たちがいる。城庭から続く中庭は開かれ自由に出入り出来る。
遠くから見える娘たちがこちらを見てヒソヒソと話す姿が見える。その中には鎧をきた戦士の姿もある談話をしているだけかも知れない。
ルカはサクナに考えすぎるフシがあると言っていた。わからないことばかりでそれも仕方ない、それに自分は疎まれてる存在だと思うと気になってしまう。
それに比べ兄のケイルは堂々として何もきにしてない様子。あまり感情を表に出す方ではないが、ケイルも十歳の頃から王宮で暮らしていたのだと実感する。
中庭から回廊に溢れる陽の光、ケイルの赤みの混じえた薄金色の髪がそよ風に揺られながら輝いている。サクナと同じ緋色の瞳はシーボルディー家の証。
「兄様、何か変わったね」
「ん?」
「何でそんなに背が伸びたの? ズルい」
「…………お前は母さんに似たんだろ。そんなに嫌か? 小さいほうが何かと便利だろ」
便利? コンプレックスに思うことはあっても便利と思ったことはない。サクナは首を傾げケイルをみる。