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祈り姫 ~甘い香りに惹かれて~
第5章 ~初めての恋は甘くて切ない味~
気を強く…………サクナは、頷くしかできなかった。弱気になっていたわけではない。だが、サクナはいつも言葉に惑わされる。
────心が弱いから…………
そう思っても直に強くなれるものでもない。
「姫様、祈り姫としての公務もありますが、妃となれば貴族との付き合いもしていかなければなりません、あまりいい印象ではないでしょうが、なかには快い方もいらっしゃいます、すべての貴族が悪い方ばかりでもありません」
サクナは「はい」っと、頷き返事をする。
「とにかく目を養うことです。自分に危害を与える相手かどうか。人は嘘もつきます、姫様を利用しようと近づく者もいるでしょう。妃として見極めてください」
人の心はわからない。それを見極めなければならない。村では姫として優しくされ愛しみ育ったサクナ、甘いところがあるのはそういう環境で育ったからだ。
裏も表もない、小さな村ならではの人の優しさを感じ疑うことを知らない。
祈り姫としてだけならそれで良かったのだろうが、妃となると王族入りする事となる。政をするわけではないが貴族との付き合いは必然。
そこには内なる思いを秘め利用しようとする者もいる、善人が善人とも限らない。
サクナはふーっとため息をつく。
今、置かれてる状況は貴族の娘にとってサクナは疎ましい存在でしかない。良くも悪くも裏の本性を見せてくれる。