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祈り姫 ~甘い香りに惹かれて~
第5章  ~初めての恋は甘くて切ない味~

 時刻は夕暮れ前、中庭の回廊はほんのり空気が変わっていた。屋根の向こうに見える空は少し赤みを見せていた。


「サクナ、夕餉は俺の屋敷で食べないか?」

「兄様の?」

 ルカがいるときは執務室の隣にある【豊熟の間】にて夕餉をとっていた。

 陛下不在であるためサクナはケイルの屋敷へ行く。

 ケイルは普段宮殿内の官舎で仮住まいしている。

 屋敷に戻ることはあまりないそうだ。近侍の屋敷として先代の陛下が父セシュルドの為に贈ってくれた屋敷でケイルはそれを受け継いだ。

 屋敷は森の近くにあり自然に囲まれ開放的。

 宮廷に比べればすごく小さな建物。しかし、村の家とは比べ物にならない立派な屋敷だった。

 こんな大きな屋敷にひとりで住むのは寂しいようにも思えなくはないが。


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