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祈り姫 ~甘い香りに惹かれて~
第5章  ~初めての恋は甘くて切ない味~

 陛下が旅立ち数日が過ぎた。

 サクナはケイルといつものように森の高台にある祈祷所に行き、祭壇にて祈りを捧げる。

 祈りの言葉は術と同じで体内のエネルギーを使う為、星の邪気を払う祈りはじわりと躯を熱くする。

 そして、星の平和と国の為。

 サクナは両手を合わせ絡めた指に瞳を移す。
 朝日にキラリと光る赤と青の魔石、そのリングに口づけをし個人的な祈りをする。


「サクナちゃんと寝てるか?」

 屋敷に戻る途中、鬱蒼と木々の生い茂る山坂を下った先にある王宮と王都への別れ道。

 サクナたちは王宮方面へ足を向かわせた時、ケイルがやや表情を歪め訊いてくる。


「うん……寝てるよ、どうして?」

「何か。ぼーっとしてるし、眠いのか?」

 サクナはドキッと胸を鳴らす。

「いや、ほら祈りは術だから少し疲れるだけ」

「だいじょうぶなのか?」

「…………そんなに変? だいじょうぶだけど」

「ならいいが、あまり無理するなよ」

 サクナは心配させまいと「うん」と明るめに言う。

 いくら兄とは言えサクナにも言えぬ秘密がある。

 ────兄様の前だから気を抜いてしまった。
 猛省しなければ…………

 サクナはここ数日とある事に悩まされていた。

 目を見開きキリッと表情を引き締める。
 サクナは気合を入れ邪念を払う。

 隣でケイルが怪訝な様子でそれを見ていた。

 
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