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祈り姫 ~甘い香りに惹かれて~
第5章 ~初めての恋は甘くて切ない味~
「あら姫様。お久しぶりですね」
王都の柱廊にて補佐官のミモリと出会ってしまう。久しぶりという程でもないがあの時以来である。
少し柔らかみのある笑顔をするミモリ。
「陛下が戻って来られるとお訊きになりました?」
「あ、はい」
「随分お早いお帰りのようですね。わたしとしてはもう少しゆっくりして頂きたかったのですが」
そうはいってもミモリもルカが無事で帰ってくることを喜んで居るのだろう。
「よほど初恋の方が忘れられないのでしょうね、姫様との御婚約が決まり、今しか会えないのですから」
「…………初恋?」
「あ、すみません姫様。あなたにする話ではありませんでしたね」
わざとらしく慌てた素振りを見せるミモリは、ふふっと陽気に笑う。
「陛下は女性に興味がないがないわけじゃない、好きな人がいるのです。ですから、誰も相手になさらない。わたしにだけ教えてくれたのです。でも陛下として祈り姫との嫡子を望まなければならない。恋愛の自由なんて本当にあるのでしょうか姫様」
サクナは直ぐにはミモリの言葉を理解できなかった。だが、胸はズキズキと痛みだす。
サクナが惚けたままその場で立ち尽くし、焦点の合わぬ目でミモリを見た。
ミモリはクスッと笑み止めを刺すように。
「そうですよね、ケイル様」
どれくらいの沈黙が続いたのか、痺れを切らすようにミモリは言葉を続ける。
「知らないわけありませんよね? 陛下とケイル様は遠征の帰りご一緒に別行動を取ると侍臣が愚痴をよくこぼしておりましたよ。でも、仕方ありませんよね、陛下も初恋の相手には想いれがありましょうから。ね、ケイル様?」