この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
祈り姫 ~甘い香りに惹かれて~
第5章 ~初めての恋は甘くて切ない味~
「サクナ、気になるか?」
中庭の回廊を歩いているとケイルは声をかけてくる。
「うん、少し。でも、正直何をどう疑えばいいのかわからない」
あんなに愛してくれるのに、それ以上何を望めば満足するのか。
きっと会えないから不安になる。
「でも、否定しないんだね」
「…………」
黙っちゃった。
ちょっと不安になってきた。
「こういう時何を言えばいいのか、俺にはわからない。何を言ってもお前を不安にさせる」
人には思いやりがある、真実が嘘からそれを誤ってしまう。
「だいじょうぶ兄様。それが事実だとしても過去の話だよね? あんなに想ってくれるのにそれが嘘だと思えないもん」
「…………」
それも否定しないの?
いや、兄はきっとこういう話が苦手なんだ。
サクナは自分に言い聞かせるように心で呟く。