この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
祈り姫 ~甘い香りに惹かれて~
第8章 ~天使の微笑みは淫らに咲く~

「ジュリアン…………」
王都が見渡せるその場所に祈り姫であるジュリアンの姿があった。
ジュリアンの隣にはルカと同じくらいのふたりの子供がいた。
幼くして母を亡くしたルカにとって、ジュリアンは、母のような存在だった。
ジュリアンの姿を眼にすると急に寂しさが込み上げてくる。
きっと。ジュリアンが哀愁の目をしていたからかも知れない。
「哀しい色……」
ジュリアンの手に繋がれたその少女は、そうつぶやきルカの頬に手をあてる。
風が冷たいせいか、少女はやけに暖かい手をしていた。
緋色の瞳、ジュリアンによく似たその少女は、ルカをぎゅうと抱きしめた。

