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祈り姫 ~甘い香りに惹かれて~
第8章 ~天使の微笑みは淫らに咲く~

ジュリアンに似た可愛いその子はとても無防備だった。
誰とも知らない相手に平気で抱きつき、頬を伝う涙を手で拭っている。
気がつけば、ルカは目と鼻の先にいるその子に唇を寄せていた。余りに無防備で寒い空の下、甘い果実のような、その暖かな体温に触れたくなった。
そのとき恋の初風が吹き、心がほんわかと暖かくなった。
季節は冬なのに少女からは春を感じた。
「まぁ!」
ジュリアンのどこか陽気な声にハッとする。
それと同時に、抱きついていた少女は隣にいた少年が奪うように後ろに隠れてしまった。
少年は、同じ緋色の瞳でルカを睨んでいる。
この者もまた、殿下ではなく妹に不埒なことをした少年に見えたのだろう。

