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祈り姫 ~甘い香りに惹かれて~
第8章  ~天使の微笑みは淫らに咲く~


 自分には護らなければならない大勢の人達がいる事を。国ではなく護るべきは人である。

 星を巡り、再び命を受けるとき平和な星に生まれて来ることを願い星を護る。

 ────泣いてもいい。

 その一言が、ルカの心を軽くした。


 いつだって、泣きごとを許されない環境に育ってきたルカ。男子たるもの人前で泣くものではない。

 初めてその辛さを知ったのは母が亡くなった時だった。ルカは今よりも幼くその事は薄っすらとしか覚えていない。

 だが、その言葉だけが強く残っていた。

 母を愛した、父がそう教えた。

 だが、ルカは知っていた。ときおり父が遠くを見つめ寂しげにしている事を。

 国王は頑として後任の妃を娶ることはなかった。


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