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祈り姫 ~甘い香りに惹かれて~
第1章  ~始まりの森~

 だが、陛下のみ住む場所と勤める場所があり、妃並びに婚約者は離れにある後宮で過ごすことになる。

 そして、後宮に住むことになる女性はその役所は陛下の妻である為、今までの役所を辞めてから後宮入りするのがしきたりである。

 王族同然、もしくはそれ以上の待遇。後宮入りは女性の憧れである。けして嫌がる場所ではない。

 国王である陛下の王妃になることは貴族の娘だけではなく、その一族が望み、自分たちのより良い地位を得るために娘を利用するものもいるほど。


「祈り姫はこの国の守神同然であり、その必要性も承知しております。陛下、結婚の自由を履き違えてはなりません、祈り姫として必要となさるなら諦めなさいませ」

「ようやくサクナは返事してくれたんだ、今更何言ってるんだ。俺はそうするとずっと言っていただろ、サクナ以外妃にするつもりもない」

 両方譲らない姿勢であるが、そのやり取りは冷静なものだった。

「陛下、ワタクシは自由を履き違えていると言っているのです。むやみに、その地位を奪われるような振る舞いはおやめください」

「…………俺の地位を奪っても一緒だろ、俺はサクナに祈り姫として妃に選んだ、当然その子供も祈り姫となる」

 ミモリはクスリと笑みを見せた。

「では、陛下は祈り姫として彼女を娶るのですね、求めるのはその血筋であると…………女性に興味を持たない陛下が望むのは彼女ではなく、祈り姫だと」

 ミモリはわかり切っていることをサクナに言い聞かせるように繰り返す。

 ルカが自分に興味を示すのは祈り姫だからと、サクナ自身を好いての事ではない。それをルカの口から言わさせようとしている。

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