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祈り姫 ~甘い香りに惹かれて~
第10章  ~暗闇の誘惑~

「我慢できないサク、お前とすごくキスしたい」

 もう、どうにかなってしまいそう。
 羞恥が蕩けてゆくような、ずっと耳元で吐息を受けながらゆっくりと話すその声だけで全身が洗脳される。

「嫌? 我慢させるなら、今日はサクに優しくできないかもよ? それでも良いなら我慢する」

 優しくできないって……何するつもり!?


 慄きが、早鐘をうつ心臓と重なり、それが甘い感情を引き出してしまう。

 ゾクッとするのに、躯の芯が熱くジクジクとしてくる。


「…………おい」

 それ迄、沈黙していたケイルが声をかける。
 その声にビクリとしたものの、この状況を助けて欲しくケイルを見る。


「そんな恥ずかしい事がよく平気で言えるな」

「本心だからな、別に恥ずかしい事じゃない」

「…………そうか」

 しーん、と、馬車内に沈黙が流れる。


「そ、それだけ!?」

 サクナは、思わず突っ込んでしまう。

「…………ああ、悪かったな。野暮なことを聞いて」

 クスッとルカの笑い声が聞える。
 どうやら、兄は助けてくれるつもりはないようだ。

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