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祈り姫 ~甘い香りに惹かれて~
第10章 ~暗闇の誘惑~

華やかなドレスに身を包んだ令嬢達がウットリとした視線で陛下を見ている。
自分のことなど目に入らぬとはわかっていても集まる視線にオドオドとしてしまう。
「陛下、随分とごゆっくりされたようですな」
奥へ進むと、ご老人と、若い青年がいた。
そのご老人は、宰相だった。
祈り姫になった時、謁見の間で王座の隣に立っていた人物。サクナは、それ以来出会う機会はなかった。
ルカと宰相が話をしているのを横で訊いていると、青年と目が合う。
淡い金髪、ブルーの瞳、どことなくルカに似た人懐こい笑顔。
「君がサクナか、訊いていたより大人っぽいね」
サクナは、ドキッとしてしまう。
どう訊いていたかは安易に想像できるが、大人っぽいなど言われたのは初めてのことだった。
「ヴィスト、姫だ。名前で呼ぶな」
「細かいことはいいでしょ? ね、サクナ」
歳の割に大人びて見えるルカに比べ、この青年はやや年下にも見える。柔らかな表情がそうさせるのだろうか。

