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祈り姫 ~甘い香りに惹かれて~
第10章  ~暗闇の誘惑~


「コレ、ヴィストーター、陛下の婚約者に失礼であろう」

 ヴィストーター? 何処かで訊いたような。

 サクナは「あ……」と、声を洩らす。

 確か、補佐官の婚約者がその名だったような、つまりこの青年は宰相の孫息子。

「極めて友好的と仰って下さい」

「…………別に友好的にならなくても良い」

 サクナはルカに視線を送る。

 何故か、ルカはご機嫌が斜めの様子。
 こんなに親しみやすい人なのに、ルカとこの青年は仲が悪いのだろうか。

 何かと王宮で疎まれる存在のサクナには、彼が良い人に見える。

 つい、ルカに似た表情に和んでしまう。


 
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