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祈り姫 ~甘い香りに惹かれて~
第10章  ~暗闇の誘惑~


 サクナはケイルの膝の上に抱えられ、これはこれでかなり恥ずかしい。

 噴水の周りは魔石光により、ライトアップされていて見るに明らかな状態。

「サクナは、こういう場はなれてないのですね。陛下も貴族の娘たちと楽しんでいるのに」

 ほら、と、ヴィストーターが指差す方向を見ると、沢山の女性に囲まれているルカの姿があった。

 爽やかな笑顔を向けるルカ。
 見るからに楽しげな雰囲気である。

「ルカ様は……公務だから。私は……その」

「サクナも公務でしょ? 妃になるんだから。ここ、おいで?」

「下心見せてる奴に公務も何もない」

 ボソッとケイルは地を這うような低い声で言う。

「やれやれ、忠犬は堅いですね。このぐらい普通ですよ? 男は皆、下心を隠し持ってるものです。何もとって喰おうとしてる訳じゃないのですから」


 柔らかな口調で優しげに言うヴィストーター。
 恥ずかしげもなくそういう事を言う血筋なのだろうか。


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